介護職にとって「介護保険制度」は必須の知識のひとつですが、苦手な方も多いものです。
介護保険制度は、2000年にスタートした日本の社会保障制度の一つです。高齢者が自立した生活を送ることができるように、必要な介護サービスを受けられるようにすることを目的としています。
しかし、介護保険制度は複雑で分かりにくい部分も多く、利用者や家族だけでなく、介護職にとっても理解するのが難しいかもしれません。
そこで、この記事では介護サービスについて、仕組みやサービス内容など基礎的なことを分かりやすく解説していきたいと思います。
介護保険制度の仕組み

まずは、介護保険制度の仕組みについて見ていきましょう。
介護保険制度の特徴
政府は、介護ニーズや従来の老人福祉制度による対応には限界を感じました。
そのため、高齢者を社会全体で支え合う仕組みとして介護保険を創設しました。
- 1997年 介護保険法成立
- 2000年 介護保険法施行
その基本的な考え方は3つです。
- 社会保険方式:国民全員が加入することで運営。
サービスを受けた分だけ自己負担することで、公平性と責任感を持つ - 自立支援:介護が必要な人が自分らしく生活できるように支援することを目指す
- 利用者本位:利用者や家族が自分に合ったサービスを選択できるようにする
介護保険制度の相関関係
「保険者」「被保険者」「サービス提供事業者」の3つ立場により介護保険は構成されます。

上の図が分かれば、大まかな介護保険の仕組みを理解することができます。
それでは、それぞれの詳細を説明しましょう。
保険者の役割
介護保険における保険者とは、保険に対して給付する義務がある者=市区町村および特別区(東京23区)です。
市区町村は、以下のような役割を担っています。
- 保険料の徴収
- 要支援・要介護認定の実施
- サービス提供事業者の指定
- サービス費用の支払い
- 地域包括支援センターの設置
要支援・要介護の方のための制度のため、介護認定を受けていることが前提となります。
介護認定を受けるためには、市区町村の窓口で認定調査を依頼する必要があります。
▼関連記事 介護認定とは?認定調査と判定方法をわかりやすく解説
また、被保険者(高齢者)が1~3割の負担した残りのサービス費用を市区町村がサービス提供者へ支払いを行ないます。
介護保険における被保険者とは
被保険者とは、40歳以上の国民全員です。
以下のように分類され、年齢や状態に応じてサービスを利用できます。
被保険者の種類 | 分類 | サービス条件 |
第1号被保険者 | 65歳以上の人 | 要支援・要介護認定を受ければサービスを利用できる |
第2号被保険者 | 40歳以上64歳以下で 健康保険に加入している人 | 16種類の特定疾病(※)に該当し要支援・要介護認定を受ければサービスを利用できる |
・癌
・関節リウマチ
・筋萎縮性側索硬化症(ALS)
・後縦靱帯骨化症
・骨折を伴う骨粗鬆症
・初老期における認知症
・進行性核上性麻痺、大脳皮質基底核変性症及びパーキンソン病
・脊髄小脳変性症
・脊柱管狭窄症
・早老症
・多系統萎縮症(MSA)
・糖尿病合併症
・脳血管疾患
・閉塞性動脈硬化症(ASO)
・慢性閉塞性肺疾患(COPD)
・両側の膝関節又は股関節に著しい変形を伴う変形性関節症
サービス提供事業者とは
介護サービスを提供する事業所がサービス提供事業者です。
以下のような種類があります。
居宅サービス | 訪問型や通所型など自宅で受けられるサービスを提供する事業所 |
地域密着型サービス | 小規模多機能型居宅介護や地域包括支援センターなど地域住 |
居宅介護支援 | 利用するサービスの種類や内容などの計画を立案・連絡・調整を行う |
介護保険施設 | 指定介護老人福祉施設、介護老人保健施設、指定介護療養型医療施設 |
介護予防サービス | 一部介護が必要な状態を軽減させたり、その悪化を防止したりする |
地域密着型介護予防サービス | 事業者のある市町村に住む人に限定した介護予防サービス |
介護予防支援 | 介護予防サービス、地域密着型介護予防サービス及び介護予防が計画に基づいてサービスが提供されるよう、事業者などと連絡・調整 |
サービスする提供場所や内容、対象者によって7つに分けられていて、各サービスの中で更に介護施設や事業所で細かく分かれています。
でも、分かりづらいですよね。
簡単に図解したものが以下になります。

サービスの監督者がどこかにより分かれていてます。
しかし、要介護=介護給付、要支援=予防給付でも分かれてるため、同じ施設でも頭に【介護予防】とついてくることもあり複雑に見えます。
ただ、一つ一つのサービスを理解すればそれほど難しくはありません。
では、どのようなサービスを提供しているのでしょうか。
次の章で分かりやすく説明します。
介護保険サービスの種類

では、7つに分かれたサービスがどのようなものか、分かりやすく説明します。
また、施設の詳細については、各事業所ごとの解説ページが参照できます。
居宅サービス
まず、介護職として働いている方の多くの人が馴染みのある居宅サービスですが、次の12のサービスをいいます。
訪問介護 | 訪問介護員によって提供される入浴、排泄、食事等の介護、そのほかの日常生活を送るうえで必要となるサービス |
訪問入浴介護 | 居宅を訪問し、持参した浴槽によって行われる入浴の介護 |
訪問看護 | 看護師、准看護師、保健師、理学療法士及び作業療法士が居宅を訪問して行う療養にかかわる世話、または必要な診療の補助を行う |
訪問リハビリテーション | 理学療法士、作業療法士、言語聴覚士という専門職が、居宅を訪問して行われる、日常生活の自立を助けることを目的としたリハビリテーション |
居宅療養管理指導 | 病院や診療所または薬局の医師、歯科医師、薬剤師などによって提供される、療養上の管理及び指導 |
通所介護 | 入浴、排泄、食事などの介護、機能訓練などを行う通い型のデイサービス |
通所リハビリテーション | 通うことで利用者の心身機能の維持回復、日常生活の自立を助けることを目的とする、リハビリテーションを実施 |
短期入所生活介護 | 短期間、施設で生活し、入浴、排泄、食事などの介護、機能訓練などを行う |
短期入所療養介護 | 短期間、施設で生活し、看護、医学的な管理の必要となる介護や機能訓練、必要となる医療、日常生活上のサービスを行う。 |
特定施設入居者生活介護 | 有料老人ホーム、軽費老人ホームなどに入居している要介護認定を受けた利用者に対して、その施設が提供するサービスの内容などを定めた計画にもとづいて行われる介護、生活支援などのサービス |
福祉用具貸与 | 利用者の心身の状況、希望及びその環境をふまえたうえで、適切な福祉用具を選定するための援助、その取付けや調整などを行い、貸し与えるサービス |
特定福祉用具販売 | 福祉用具のうち、入浴や排泄の際に用いられるなど、貸与にはなじまないものを販売する |
地域密着型サービス
「地域密着型サービス」を利用できるのは、原則としてサービスを提供する事業者のある市町村に住む人に限られます。
そのため、デイサービスや特定施設入居者生活介護などは、地域密着型とついているだけで、内容は同じです。
定期巡回・随時対応型訪問介護看護 | 定期的な巡回や連絡によって、居宅を訪問して行われる入浴、排泄、食事などの介護や療養生活を支援するための看護 |
夜間対応型訪問介護 | 夜間の、定期的な巡回や利用者からの連絡によって、利用者の居宅を訪問して行われる入浴、排泄、食事などの介護 |
地域密着型通所介護 | 通所介護と同様 |
療養通所介護 | 難病等の重度要介護者またはがん末期患者を対象とし、通うことで、常時看護師による観察がある中、入浴、排せつ、食事等の介護その他の日常生活上の世話と機能訓練を行うサービス |
認知症対応型通所介護 | 認知症と診断された人が、訪問して利用するデイサービス |
小規模多機能型居宅介護 | 訪問介護、デイサービス、ショートステイを一つの事業所で受けることができるサービス |
認知症対応型共同生活介護 | 認知症の人が小規模な集団生活の中で、入浴、排泄、食事などの介護、そのほかの日常生活を送るうえで必要となるサービスを提供 |
地域密着型特定施設入居者生活介護 | 特定施設入居者生活介護と同様 |
地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護 | 地域密着型介護老人福祉施設に入所している利用者を対象として、介護、そのほかの日常生活を送るうえで必要となるサービスなどや機能訓練、療養上のサービスを提供 |
看護小規模多機能型居宅介護(複合型サービス) | 小規模多機能型居宅介護に訪問看護が加わったサービス |
居宅介護支援
福祉サービスなどを適切に利用することができるよう、利用者本人や家族の希望などを考慮したうえで、利用するサービスの種類や内容、これを担当する者などを定めた計画を立案し、事業者などと連絡・調整を行います。
つまり、ケアマネージャーの駐在する事業所です。
介護保険施設
指定介護老人福祉施設、介護老人保健施設、指定介護療養型医療施設をいいます。
介護福祉施設サービス | 施設サービス計画に基づいて、介護、そのほかの日常生活を送るうえで必要となるサービス、機能訓練、健康管理及び療養上のサービスを提供 すなわち、特別養護老人ホームを指します |
介護保健施設サービス | 介護老人保健施設 看護、医学的な管理の必要となる介護、機能訓練、そのほかの必要な医療、日常生活上のサービスを提供することを目的し、所定の要件を満たして都道府県知事の許可をえた施設 |
介護医療院サービス | 療養上の管理、看護、医学的な管理の必要となる介護、機能訓練、そのほかの必要な医療、日常生活上のサービスを提供することを目的し、所定の要件を満たして都道府県知事の許可を得た施設 |
介護療養施設サービス | 療養病床などのある病院または診療所で、療養上の管理、看護、医学的な管理の必要となる介護、そのほかのサービス、機能訓練、そのほかの必要な医療を提供することを目的とした施設 |
介護予防サービス
身体上、精神上の障害により、日常生活の基本動作について常に介護が必要である状態であったり、日常生活に支障がある状態の人に、介護度の進行予防をするサービスです。
つまり、要支援者向けになります。
そのため、今まで出てきたものと同様のサービス内容に介護予防と名称が加わっただけと考えて良いものが多くあります。
介護予防訪問入浴介護 | 介護予防を目的として、利用者の居宅を訪問し、持参した浴槽によって期間を限定して行われる入浴介護 |
介護予防訪問看護 | 介護予防を目的として、看護師などが一定の期間、居宅を訪問して行う、療養上のサービスまたは必要な診療の補助 |
介護予防訪問リハビリテーション | 一定の期間、利用者の居宅で提供されるリハビリテーション |
介護予防居宅療養管理指導 | 介護予防を目的として、病院、診療所または薬局の医師、歯科医師、薬剤師などによって提供される、療養上の管理及び指導 |
介護予防通所リハビリテーション | 一定期間、介護老人保健施設、病院、診療所などで行われる理学療法、作業療法、そのほかの必要なリハビリテーション |
介護予防短期入所生活介護 | 短期間、施設で生活し、看護、医学的な管理の必要となる介護や機能訓練、必要となる医療、日常生活上のサービスを行うショートステイ。 |
介護予防短期入所療養介護 | 短期間、施設で生活し、介護予防を目的としてその施設で行われる、看護、医学的な管理の必要となる介護や機能訓練、必要となる医療、日常生活上の支援を行う |
介護予防特定施設入居者生活介護 | 介護予防を目的として施設に入所し、計画にもとづいて行われる介護、生活支援などのサービス |
介護予防福祉用具貸与 | 福祉用具のうち、介護予防に効果があるとして厚生労働大臣が定めた福祉用具を貸し与える |
特定介護予防福祉用具販売 | 福祉用具のうち、介護予防に効果のあるものであって、入浴や排泄の際に用いられるなどの理由によって貸与にはなじまないものを販売 |
地域密着型介護予防サービス
「地域密着型介護予防サービス」を利用できるのは、原則としてサービスを提供する事業者のある市町村に住む要支援の人に限られます。
介護予防認知症対応型通所介護 | 介護予防を目的として、などを訪れ、入浴、排泄、食事などの介護、そのほかの日常生活を送るうえで必要となるサービスなどや機能訓練を行う |
介護予防小規模多機能型居宅介護 | 要支援の人を対象に、訪問介護、デイサービス、ショートステイを組み合わせて提供 |
介護予防認知症対応型共同生活介護 | 介護予防に効果のある福祉サービスなどを適切に利用することができるよう、利用者本人や家族の希望などを考慮したうえで、利用するサービスの種類や内容、これを担当する者などを定めた計画を立案し、事業者などと連絡・調整を行うケアマネージャーの駐在する事業所 |
まとめ
2025年には団塊の世代が後期高齢者となります。
そのため、重度な要介護状態となっても住み慣れた地域で自分らしい暮らしを人生の最後まで続けることができるよう、保険者である市町村や都道府県が中心に動けるよう構築されています。
そのため、介護職員や利用者にも複雑に感じる仕組みになっているのが現状です。
しかし、一つひとつのサービスを理解することで分かってくるものです。
この記事は介護サービスの内容について分かりやすく説明させていただきました。
そのため、詳細に関しては抜粋していることをご了承ください。
実際のサービスの利用方法などは、次の記事で分かりやすく説明させていただきます。
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